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転写
人は地球の囚人だ
宇宙の見えない鎖に縛られている
しかし種を存続させたいなら
脱獄が必要だ
でも その鎖とは何だろう?
話は45億年前になされた
ある借金にまでさかのぼる
エネルギーの刑務所
すべての物体はお互いに引き合う
この現象を"重力"と言う
大きな物体に近づけば
物体は より大きな力で引っ張られる
これが見えない鎖だ
私たちは重力刑務所の囚人と言える
単純だが 仕組みの説明として有効だ
囚人にはエネルギーの借金がある
どういうことだろう?
物体は速度や方向を変えたがらず
動かすにはエネルギーが必要だ
何億年前 大量のちりが重力に引かれ
太陽の周りで固まり 惑星ができた
ここでエネルギーが使われ
重力のくぼみができた
この分が重力からの
エネルギーの借金だ
エネルギーがなければ
ここからは出られない
あなたを形作っている原子は
宇宙が集めたちりだからだ
OK もう一度整理しよう
物は動きたくない
動かすにはエネルギーが必要
重力はエネルギーを使い
地球を作った
これが重力の刑務所になっていて
出るには エネルギーの返済が必要
では どう返済するのか?
重力刑務所の脱出
宇宙に行くには
エネルギーのやり取りが必要だ
そのために
このエネルギー返済マシーンを使う
普通に言うなら"ロケット"だ
ロケットは 化学反応よる爆発力を
うまく制御して使っている
ここではエネルギーの変換が起きる
化学反応物を一方向に出し
進む物理力にする
そして上に行くと
位置エネルギーが増大する
簡単に言うと
重力にエネルギーを返している
実際はもっと複雑だ
宇宙までには他に
熱 排気ガス 空気抵抗などがあり
払う分はもっと多い
そして大量の燃料を人と一緒に乗せ
爆発させるので
その制御のため
ロケットは頑丈でなければならない
つまり 重くなる
重いと さらにエネルギーが要るので
載せる燃料の量が増える
燃料が増えれば また重くなり
そのための燃料もまた増え
そうして むしろ燃料の方が多くなる
結果 ロケットの重さは100倍になる
例えば アリアン6という
ヨーロッパのロケットは
10トンのものを宇宙に運ぶために
800トンの重さになっている
そして推進力しかないため
ロケットの重さ自体には上限がある
重すぎると発射できず
燃料タンクは大きくできない
ここが悩みの種であり
宇宙飛行が困難な理由だ
それだけではない
宇宙に出たとしても
重力圏から出なければ
地球に戻される
行くより 留まる方が難しい
留まるというのは
低軌道に入るということだ
大量の運動エネルギーが必要で
とてつもない速度になる
高度100kmだとすると
秒速8km
時速2万8000km必要で
90分で地球を一周できる速さだ
ここで技を使う
縦ではなく 横に飛ぶのだ
地球は丸い
つまり横に速く飛べば
たとえ落ちても 地面までは落ちない
だから高い所を飛び続ける限り
軌道に入り そこに留まる
ISSも同様で
地球に落ち続けつつ 安定している
軌道と言っても
月の軌道よりはだいぶ近いが
物体を他の惑星まで送るには
さらに多くのエネルギーが要る
軌道への突入は宇宙飛行の最難関だ
例えば火星に行くには
燃料の半分を軌道の突入に使い
残りの半分で5500万kmの道を行く
効率的に行くには
ロケットは小さい方がよく
それゆえ途中で
空の燃料タンクは捨てた方がいい
今は 使い終わった所から捨てて
各段階が一つのロケットになる
という構造をしている
宇宙に出るのは大変なのだ
難しく感じても それは仕方ない
それがロケット科学だ