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転写
もし1980年代に
コンピューターがすべてで使われる
と言われたらどうだろう?
何億という人がネットで繋がり
携帯式の機械が
スパコンの能力を超える と
突飛な話だが 実際に起きた
SFが現実化したが 人はすぐ慣れた
それと近いのが遺伝子工学だ
その話をしよう
今何が起きているのか
最新技術は世界をどう変え
新しい常識となっていくのか
“遺伝子組換え”
人類は数千年間 工学をしてきた
種を選別し 良い特徴を強化したのだ
成功したが 仕組みは謎のままだった
デオキシリボ核酸
DNAを見つけるまでは
複雑な分子によって
すべての生物は発達 生殖を行う
分子構造には情報があり
4つの基本単位が指示を出している
指示を変えれば 生物も変わる
DNAの発見後 研究が始まった
60年代 植物に放射線を浴びせ
遺伝子に変異を起こさせた
有用なものができないか探し
できることもあった
70年代 細菌 植物 動物の
遺伝子の一部を混ぜて組換え
研究 薬 農業などへの応用を探った
1974年 組換えたネズミが生まれ
研究道具として多くの命を救った
80年代 最初の特許が
石油を食べる微生物で取られた
現在では多くの化学物質が
組換え生物から生み出されている
以前は動物の臓器からだった
1994年 初の遺伝子組換え食品が発売
新鮮さが長持ちするそのトマトには
腐敗を抑える遺伝子が入っていた
この話でも動画が一つ作れるだろう
90年代 人間への応用が始まった
不妊治療で3人の遺伝子から
子どもが生まれた
3人の親を持つ最初の人間の誕生だ
他に筋肉質のブタ 成長の早いサケ
毛なしのニワトリ 透明なカエルも
明るい話もある
光る熱帯魚が今では10ドルで買える
驚くべきことだが
未だ遺伝子編集はとても高価で
時間のかかる技術だ
そこに今 革命的な新技術が登場した
クリスパーだ
これにより費用が99%削減され
時間も1年から数週間に短縮
簡単に扱えるようになった
このすごさを伝えるのは中々難しい
人類を永久に変える可能性がある
ではこの革命的技術は
どんなものなのか
“地球最古の戦争”
細菌とウイルスは昔から戦っている
バクテリオファージは細菌を捕まえ
海では毎日その40%を殺している
自身の遺伝子を注入することで
細胞を乗っ取っている
細菌も抵抗するが
道具が弱すぎて大抵は負ける
しかし生き残ることもある
生き残ったのは
反ウイルスシステムがあったからだ
そのシステムはウイルスのDNAを
クリスパーに保存する
安全なDNA保管庫だ
ウイルスに攻撃されると
ここでRNAをコピーして
CAS9という秘密兵器に渡す
ここではウイルスがいないか
体内にあるDNAと
保管していたDNAと照合している
100%一致した場合
そのウイルスのDNAを切断し
攻撃できなくさせている
その仕事はとても正確で
DNAの外科医と言える
この機能が利用できると
気づいたのが大きかった
DNAのコピーを渡して
細胞に入れればいい
古い技術が地図だとすれば
クリスパーはGPSシステムだ
正確で 安く 簡単な
遺伝子の編集が可能になり
遺伝子を操作して
研究できるようになった
どの細胞でも可能だ
細菌 植物 動物 人間のでも
十分革命的だが
これはまだ第一世代の道具で
今はより正確な道具が作られている
“病気はなくなる?”
2015年 クリスパーで細胞内の
HIVウイルスの除去を試すと
うまくいった
次に 全細胞がHIVに感染した
ネズミを使って実験すると
クリスパーを注射しただけで
50%以上のウイルスが除去できた
これを使えばHIVウイルスの他
ヘルペスなどのウイルスも
数十年以内に撲滅できるだろう
クリスパーは最悪の敵
ガンにも使える
ガンは細胞が死を拒み
体内に潜伏したものだが
免疫細胞を強化すれば
発見も可能になる
将来ガンの治療は
強化した自分の細胞の注射で
行われるのかもしれない
2016年初め アメリカで
クリスパーの臨床試験が認められ
ひと月経たず 中国からも
肺ガンで試験を行うと発表があった
進歩は早い
遺伝病はどうだろう
死んだり 長く苦しむものなど
たくさんの遺伝病があるが
これもなくせるかもしれない
3000を越す遺伝子病は
DNAの不具合で起こる
改良したCAS9なら
壊れた遺伝子だけを
治すことができる
将来 病気はなくなるかもしれない
しかし実用には問題もある
治療法は個人にしか使えず
その人の生殖細胞か 初期胚が必要だ
クリスパーの用途は他にもある
遺伝子組換え人間の作成だ
これは人類自体を変えることになる
“デザイナーベビー”
人間の胚の編集技術はすでに存在し
まだ初期段階ではあるが
すでに2回行われた
2015年と2016年 中国で実験が行われ
2回目の実験で部分的に成功した
多くの課題があるとわかったが
科学者は進歩を果たすだろう
70年代のコンピューターが
そうなったように
この技術は人類全体に影響を及ぼす
組換えた人間の遺伝子は
世代を経て拡散していき
やがて人類の種全体を
変えることになる
最初は控えめに
大きく変えるというより
遺伝病を除去する形で始まるだろう
技術が進むにつれて
遺伝子を組換えない方が
非倫理的になりえる
子どもたちの苦しみを
取り除かないものとして
だが一度認められれば
ドアは開き 閉められない
最初こそ扱わないものの
遺伝子組換え技術が進み
受け入れられていけば
誘惑が出てくる
アルツハイマーは予防して
メタボは予防しないのか?
完璧な視力は?
高い身長や筋肉は?
枯れない髪
高い知性を授けたらどうか
多くの選択が積み重なれば
大きな変化になるだろう
この道を行けば
遺伝子組換えは新常識になる
そしてさらに技術が進んだ場合
老化問題も解決できるかもしれない
1日に死ぬ15万人の3分の2が
老化が原因だ
老化は 細胞への損傷の蓄積によって
DNAが壊れるなど
修復力が弱まることで起きる
遺伝子が関係しているため
遺伝子操作と治療によって
老化を止められるかもしれない
老化しない生物がいるが
そこから遺伝子を借りたりして
ある時のまま 老化は止められる
と考える科学者もいる
いつかは死ぬが
90歳で入院する代わりに
ずっと若いままで生きられる
研究はまだ揺籃期だ
老化防止には懐疑的見方も多くある
解けそうにない課題が山積みだ
だが最初に恩恵を受けるのが
現代人の可能性はある
あとは次に解くべき問題に
設定されるだけだ
遺伝子組換えで
すぐ解決する問題は多い
消化器官を強化すれば
肥満などが解消できるだろう
より有力な改良した免疫系を持てば
今ある多くの病気に対抗できる
さらに遠い将来
宇宙旅行に最適化させたり
別の惑星に適応させたり
あらゆる場所での生存に
役立つことだろう
“少し批判的に”
まだ技術的 倫理的に
大きな課題が残っている
心配もあるだろう
不完全な人間を排除した新世界を
作ろうとしているのではないか と
しかし現実もそうだ
世界中で 遺伝病の危険性が
妊婦に対し教えられている
疑いが 妊娠を終わらせることもある
よく見られるダウン症を例に取ると
ヨーロッパでは
疑いが出た内 92%が中絶した
中絶判断は個人的なものだが
それが事前の選別である
と認識することは大事だ
この傾向に従うとき
選択肢が増えていくなら
慎重さと尊重の念が必要になる
だがまだだろう
クリスパーは強力だが
まだ完璧にはほど遠い
編集次第で何が起こるか
まだよくわかっていない
遺伝子編集で病気は治せても
別の変化が起きるかもしれない
遺伝子は複雑で謎が多く
結果が予測できない
正確さと監視が
最初の問題となるだろう
明るい話をしてきたが
暗い話もある
北朝鮮のような国が
技術を持ったらどうなるか
壮大な計画にこの技術を使ったら?
遺伝子を変えた兵士で
最強の軍隊を作ったら?
理論上はできる
ありえない話に聞こえるが
可能性はあるのだ
このような技術の基礎が
今築かれている
この技術は強力だ
だからといってすぐ禁止にするのは
間違いだろう
それはこの科学の管理権限を
不安定な場所に置くことになる
研究し続けることでこそ
研究が安全で健全で透明なものなる
“結論”
不安になった?
これは間違いか?
将来 私たちは存在を許されないのか
少し怖い技術だが 利益は大きい
もしかしたら遺伝子工学は
進化の一段階かもしれない
病気はなくなり
寿命を何百年と伸ばし
宇宙を旅する
話はいくらでも広がりそうだ
慌てても騒いでも
未来は気にせずやって来る
突飛なSFがもうすぐ
新しい現実になる
可能性と挑戦に満ちた現実に
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